ヨシップ・ジェネラリッチの作品解説

ヨシップ・ジェネラリッチの作品の最大の特徴は、なんといっても彼独特のキャラクターたちです。

ジェネラリッチの作品に登場する様々なオブジェクトは、農民や釣り人などの人物や、鳥・牛などの動物、花や木々、雪だるまや昆虫、雪を被った家々から山に至るまで、彼独自のデフォルメが施され、愛くるしいキャラクターと化しています。

但し、愛らしいキャラクターといっても、外見を可愛らしくしてアピールすることが目的のアニメなどのキャラクターとは違い、ジェネラリッチの作品に登場するこれらのオブジェクトは、伝統的なクロアチアの農村生活に存在するモノたちをベースに描かれたものです。

これらの様式化されたキャラクターたちで構成される画面は、様々なテーマを表現するために描かれているのであり、ジェネラリッチが過ごした農村での思い出が詰まった具象画としての芸術性を感じることができるものなのです。

東欧のかつての農村をイメージした世界で暮らすキャラクターたちの微笑ましい姿は、現代のストレスが溜まりがちな生活で疲れたあなたに安らぎを与えてくれることでしょう。

ヨシップ・ジェネラリッチの作品の特徴の中でも、ガラス絵が多いことは特筆すべきものの一つでしょう。

日本の皆様にとってガラス絵を見る機会はほぼ皆無に等しいと思われますが、ガラスに描かれた作品はキャンバスに描かれた絵画に比べてより鮮やかに見えるという特徴があります。

通常の絵画に透明のコーティングを施した感じといえばイメージしやすいのではないでしょうか？

なぜなら、ガラス絵はガラスの表面ではなく、裏側に絵の具を塗って描く技法だからです。

したがって、油彩画では最初に塗った絵の具は後から塗った絵の具によって見えなくなりますが、ガラス絵の場合は最初に塗った絵の具が一番前に出てくるため、最初からどのような見え方になるかを考えながら絵の具を塗っていかないといけない特殊な技法が要求されるのです。

ジェネラリッチの作品はガラス絵であることに加えて、鮮やかな顔料が効果的に使われており、全体的には落ち着いたトーンの作品でも活き活きとした印象を与えてくれます。

ギャラリーアイが扱っているジェネラリッチの作品はすべてガラス絵ですので、日本では珍しいガラス絵をこの機会に是非とも楽しんでいただきたいと思います。

ヨシップ・ジェネラリッチの作品も、他のクロアチア素朴派の作品同様、クロアチアの田舎の暮らしを主なテーマとして描いています。

さて、そもそもクロアチアと聞いてどんな所かわかる方も少ないかもしれません。

クロアチアはかつてはユーゴスラヴィアと言われた東欧の国の一部が独立して生まれた国家です。

イタリア半島の東の対岸にあたり、アドリア海に面した側にはドゥブロニクという美しい海岸をもつリゾート都市もあります。

現在でも、クロアチアの国土の大半は農地で、古いヨーロッパの街並みを残した首都のザグレブを離れると、果てしなく続くコーン畑の中に時折農村の集落がポツポツ見えるといった風情です。文字通り風光明媚なその景色は、正に素朴派の絵のようです。

クロアチアの地方都市に行けば、一般的な人でも日本では考えられないような大きな家を持ち、裏庭にはワイン畑を持っているといった暮らしをしていて、素朴派の絵の中に住んでいるかのような環境です。

ジェネラリッチの作品からも、そんなヨーロッパの農村の姿を垣間見ることができ、滅多に訪れる機会のない異国の香りを楽しませてくれます。