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今回ご紹介するのは、典型的な日本人銘柄でもあるユトリロです。日本人銘柄とは、日本人がよく買うアーティストのことですが、世界的に人気にある画家であっても、日本で人気があるとは限らず、売れるのは特定の画家に限られます。
ユトリロはエコール・ド・パリの画家に分類されることが多いのですが、彼はフランス人なので厳密には違います。
ただ、フランスに来た異邦人という点以外では、20世紀初頭のモンマルトル界隈で、独自のスタイルで活動していた芸術家という要素がエコール・ド・パリの画家の条件と合致するので便宜上同じカテゴリーに分類されているのです。
ユトリロは風景画家として知られており、哀愁漂うモンマルトルの風景を描いた作品が一番の人気です。
さて、ユトリロをおすすめする一番の理由は、日本人銘柄であるとともに、海外でも一定の人気があり需要が安定しているからです。
世界の美術市場の中でも、特に日本でユトリロが人気なのは、彼の回顧展が毎年のように日本で開かれていることでもよく分かります。その展覧会を主催しているのは、ユトリロの鑑定機関であるユトリロ協会です。つまり、ユトリロに関しては世界で最も権威のある組織が率先して日本に売り込みをかけているくらい、日本はユトリロの有望な市場ということでしょう。
しかし、ユトリロの主な市場が日本だけでは、多くの日本人画家の作品同様、その相場は日本の景気の動向にもろに影響を受けてしまいますが、ユトリロの場合、日本以外にもその市場は健在のようです。
バブル経済崩壊後、多くの日本人銘柄の作品が暴落しましたが、そのほとんどの相場はしばらくして元の状態まで回復しました。それは、日本人に買い負けていた外国勢の経済の勢いが増して、バブル期の日本人以上に作品を買い始めたからです。
ユトリロの相場も一旦下がりましたが、数年後にはかなり復調しました。現在でも、さすがにバブル経済の最盛期の価格には及びませんが、海外でつけられる価格はかなり強気のものもあり、ユトリロの作品に関しては、国内外でしっかりした市場が形成されていると思われます。
ユトリロをおすすめする2番目の理由は、彼が描くのは日本人が好きな心象風景だからです。
心象風景とは、心の中に思い浮かぶ光景のことですが、実在するモンマルトル界隈を描いたユトリロの作品は、心象風景ではないとお考えの方も多いと思います。
実は、ユトリロの作品の多くは絵葉書を見て描いたもので、実際の風景を見ながら描かれたものではありません。
ユトリロはモンマルトルに住んでいたものの、彼には外に出て絵を描くことができない事情があったのです。
彼は酷いアルコール依存症で、精神錯乱して奇行に及ぶことも度々ありました。そんなユトリロに対して、近所の子供たちがイーゼルを蹴飛ばすなどの悪戯をして絵を描く邪魔をしたり、また、アルコール依存症のせいで、鉄格子のはまった部屋に幽閉されたりしていたのです。
したがって、絵葉書を見ながら、よく知っているモンマルトルの風景に記憶を重ねて描いたユトリロの作品は、写実画というよりも彼の記憶の中にあるモンマルトルの心象風景を描いたものといえるでしょう。
そんな彼の作品の特徴である憂愁感は、外に出られない不自由さや孤独感、幼い頃からの様々な記憶が入り交じり、絵筆を通して表出されたものなのかもしれません。
また、「白の時代」と呼ばれる最も評価の高い時期の作品には、建物の壁の質感を出すために、油彩絵の具だけでなく石灰、鳩の糞、卵の殻、砂などを混入しました。ユトリロのそうした絵肌へのこだわりは、彼が子供の頃よく壁から剥がれ落ちた漆喰で遊んだ経験が影響しているようで、彼にとってのモンマルトルは漆喰の壁抜きでは語れないものなのでしょう。
日本にも、岡鹿之助や牛島憲之などの心象風景を描く人気作家がおり、人気のある分野の一つです。
そして、哀愁漂う風景画や、絵肌にこだわった作風も日本人の好きな特徴であると共に、ユトリロの風景画の大きな魅力の一つでもあります。
そんな日本人好みの要素が詰まったユトリロの作品なら、あなたのコレクションに加えるに値する、後悔のない一枚となることでしょう。
ユトリロをおすすめする3番目の理由は、その価格の手頃さにあります。
海外にも市場のある画家の作品ともなると、一般的に高額になってしまいます。
そんな画家たちの中では、ユトリロの作品は比較的買いやすい価格帯だといえるでしょう。
ユトリロの作品の中では、最も高い評価を得ている「白の時代」の作品やサクレクールなどの人気の図柄が描かれている作品だと、やはり数千万円するものもあります。
しかし、油彩画でも作品を選べば、1千万円以下のものもありますし、水彩画ならかなりの作品が数百万円のご予算で入手可能です。
ユトリロの作品は傑作といえるような良品からあまり出来の良くないもの、1mを超える大きいものから30cmほどの小品、油彩画、水彩画と様々な選択肢があり、値段もかなりの幅があります。
出来の悪い油彩画は意外なほど安いものもありますが、あまりユトリロの良さを味わえるとは思えません。それよりは小粒でぴりりとした小品や水彩画の方が、満足度は高いでしょう。
ちなみに、上の「オルドネル通り、パリ」も水彩画ですが、ユトリロらしい雰囲気が味わえるいい作品です。
ユトリロをはじめとするフランス近代美術の絵画をお求めになろうとしても、実際に取扱いのある画廊はなかなか見つかりません。
ギャラリーアイでは、エコール・ド・パリの人気作家であるユトリロの作品を積極的に仕入れるようにしており、常時数点の在庫が確保できるように努めております。
ユトリロの作品をお探しの方は是非一度お問い合わせください。
2024年のギャラリーアイの夏季休暇は、8月10日から8月18日の予定です
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